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技術情報


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アーク溶接とシールドガス
Ⅴ. シールドガスの種類

1.シールドガスには、どのような種類のガスがあるのでしょうか?

 アーク溶接で一般的に良く使われているガスは、炭酸ガスとアルゴンである。日本では炭酸ガスを単独で使うケースが多い(最近では、アルゴンと炭酸ガスの混合ガスが多く使われるようになりました。)が、欧米ではアルゴン及びアルゴンと炭酸ガスを混合したシールドガスを使うのが普通である。また、米国ではヘリウムも比較的多く使用されているようだ。下表はシールドガスとシールドガスの副ガス(原料ガス)、並びに各ガスの物理的性質を現しています。

  ガス名 物理的性質
分子量 熱伝導度 沸点 比重 電離電圧
ガス名 分子記号 (×10-6cal/s・㎝) (℃) (空気) (V)




アルゴン Ar 39.94 39.08 -185.8 1.38 15.7
ヘリウム He 4.003 340.07 -268.9 0.14 24.5



炭酸ガス CO2 44.01 34.98 -78.5 1.5 14.0
酸 素 O2 31.99 57.9 -182.97 1.1 12.5
水 素 H2 2.016 402.1 -252.8 0.07 15.4


2. アルゴンガス(Ar)

2-1)  不活性ガスの代表的なガスです。
2-2)  アルゴンは溶接物および溶接法によって下表のように、単独で使用する場合と、他の不活性ガス或いは活性ガスと混合して使用される場合があります。
溶接物 TIG/プラズマ MIG MAG
・アルミニュウム合金
・銅合金
Ar ・ He
Ar+He
Ar ・ He
Ar+He
 
ステンレス鋼 オーステナイト系 Ar ・ He
Ar+H2・Ar+He
Ar+2%O2
Ar+5%CO2
Ar+He+CO2
Ar+10%CO2
(CO2の含有量は少ないほうが良い。)
フェライト系 Ar ・ He
Ar+He
炭素鋼・高張力鋼 Ar ・ He
Ar+H2・Ar+He
Ar+2%O2
Ar+5%CO2
Ar+He+CO2
Ar+O2
Ar+CO2
Ar+CO2+O2
Ar+He+CO2

2-3)  粗アルゴンを使用する場合の注意:
 アルゴンの製造方法は、空気深冷分離法で沸点の差を利用して作られますが、最初に出てくるアルゴンは、酸素と窒素が数%含まれてた粗アルゴンです。この粗アルゴンを後工程の精製工程で品質の良い(JIS規格以上)アルゴンが作られます。
 実際に粗アルゴンを溶接ガスとして使用されているユーザーもありますが、このような粗アルゴンはTIG・プラズマ溶接には使用出来なく、炭酸ガスと混合してMAG溶接で使用されているケースがあります。これら酸素・窒素を含む粗アルゴンから作られる混合ガスは、酸素濃度が一定ではなく、溶け込み深さが変動する危険性があり、また、スラグ(酸化物)の生成が多く溶融金属中に巻き込み、溶接欠陥になる可能性が高くなります。また、窒素も含んでいますので、ブローホールが発生する可能性もあります。また、JIS規格・WES規格にも該当いたしません。

2-4)  JIS規格:JIS K 1105 (H17年10月20日改正)
  純度
(%)
不純物 備 考
O2
(ppm)
N2
(ppm)
露点
(℃)
1級 99.999以上 3以下 7以下 -65以下 表の数値は体積です。
2級 99.995以上 10以下 40以下 -60以下
溶接アルゴンとしては、一般的に窒素を考慮した1級アルゴンと同等以上の品質のものを基準とする。
露点-65℃は水分5.3ppm、-60℃は水分10.7ppmに相当する。

3. 炭酸ガス(CO2

3-1)  アーク中での炭酸ガスのメカニズム(CO2で溶接が出来るのか?)
 炭酸ガスは、シールドガスとしてアークや溶融金属を大気(空気)から保護していますが、実際にはアークの高熱で酸素と一酸炭素に解離しています。解離した酸素が溶融金属と反応して、悪さをするのではないかと思われますが、次のようなメカニズムでシールドガスの役割を果たしていると言われています。

① CO2は下図に示しますように高温で(1)式のように解離します。



②  このCO + O2 の雰囲気に溶融鋼が存在すると次の(2)の反応を起こします。


③ 鋼中のCがFeよりもO2と結びつきやすいので、

の反応が起こり、(1)、(3)式で生じたCOが、溶滴が凝固するとき気泡となって、一部溶接金属に残りブローホールとなります。

④ これを防止するためソリッドワイヤー中にMn,Siなどの脱酸剤を多量に入れます。
  そうしますと(3)の反応より、次の(4)式の反応が起こります。

(4)式の反応の結果、ビード表面にわずかにMnO,SiO2のスラグが生成され、溶接部はブローホールのない健全な溶接金属が得られます。このためソリッドワイヤーにはMnが1.5%程度、Siが0.8%と多量に含まれております。針金や釘などと大きく異なる点の一つです。
3-2)  炭素鋼のMAG溶接で炭酸ガスは単独で使用される場合もあります。また、フラックス入りワイヤとの組合せにより炭素鋼(造船)やステンレス鋼等にも使用されています。
3-3) 

炭酸ガスの短所

・スパッターが多量に発生し、ビード外観が劣る。
・溶接作業性が低く、ロボット溶接等の自動化では作業効率が劣る。
3-4)  現在では溶接作業性を改善し自動化の促進によりトータルコストの低減を目的として、炭酸ガスはアルゴンとの混合ガスの形で広く使用されている。
3-5) 

JIS規格:JIS K 1106

  純度(容量%) 水分(重量%) 臭 気
1級 99.0以上 悪臭のないこと
2級 995以上 0.05(500ppm)以下
3級 99.5以上 0.005(50ppm)以下

4.酸素ガス(O2

4-1)  酸素は、アルゴンあるいはアルゴン+炭酸ガスと混合して使用されます。
4-2)  アルゴンとの混合ガスは、炭素鋼の薄板あるいはステンレス鋼のMIG溶接に使われます。
4-3)  酸素は、溶融金属の温度を上昇させその粘性を下げ、アーク温度を上げアークを広げる性質をもっています。
4-4)  アルゴン+酸素混合ガスを使う溶接での、溶接姿勢は溶融金属の粘性が低いので、溶融金属の湯が流れやすくなるため下向姿勢が適しています。
4-5)  JIS規格:JIS K 1101
  純度(%) 不純物 / 水分(H2O)
酸 素 99.5以上 規定はない

※H2Oについては、JIS K1101では規定はないが、実用品は10ppm以下にすべき、凝縮した水分を認めないこと



5.水素ガス(H2

5-1)  一般にTIG・プラズマ溶接用にアルゴンとの混合ガス(Ar+H2)として使用されている。
5-2)  Ar+H2混合ガスは、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、316等)に用いられ、その他のステンレス鋼(フェライト系等)には絶対に使用しないようにしましょう。
5-3)  規格:JIS K 0512
  純度
%以上
不 純 物(ppm以下)
N2 O2 CO2 CO SO2 水銀蒸気 露点(℃以下)
1級 99.9999 0.2 0.3 0.1 0.1 0   -70
2級 99.999 5 0.5 1 1 0   -60
3級 99.99 25 4 10 10 2 0.004 -50
4級 99.9 40 100 - - 10   凝縮しないこと

※溶接用としては、一般に3級程度のものが用いられる



6.ヘリウムガス(He)

6-1)  不活性ガスである。
6-2)  日本国内のヘリウムガスはすべて輸入品です。
6-3) 単体で用いられることもありますが、通常は混合ガスとして用いられます。
6-4) 一般にTIG溶接やアルミニュウム合金のMIG溶接に混合ガスとして使用されます。
6-5)  ヘリウムは熱伝導度が高いので、アルゴン単独より大きな入熱が可能となり、広くて深い溶け込みを得ることが出来ます。
6-6)  JIS規格:
     JIS規格の規定はない。参考として高圧ガスメーカーの溶接用ヘリウム規格を示す。
高圧ガスメーカー
の規格
純度
(%以上)
不純物(ppm以下)
N2 O2 水分
99.995 10 2 10


7.参 考

・JIS(Japanese Industrial Standard):日本工業規格
・WES(The Welding Engineering Society Standard):日本溶接協会





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